『三島由紀夫レター教室』〜年を重ねると共に面白さも変わる。おすすめ名言10選。〜

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ワナッカム!

インドタミルナードゥ州ホスールにて養蚕農家への知識・技術普及活動に取り組んでます、あらちゃん(@kazuuuyama)です。

好きな本の一つである『三島由紀夫レター教室』を紹介します。

著者は言わずもしれた三島由紀夫。彼の他の著書を多く読んだわけではないですが、おすすめしたい一冊です。

この『三島由紀夫レター教室』は年を重ねると共に面白さ・作品の感じ方が変化します。

私がこの作品に出会ったのは大学4年生(22歳)の頃。あれから5年程の歳月が流れましたが1年、2年と作品を見返すたびに違った印象を受けます。

なぜなんでしょうか?

作品の大まかな概要と、作品の中で出会った素敵な名言10選をご紹介したいと思います。

三島由紀夫(1925-1970)プロフィール

まずは著者である三島由紀夫の簡潔なプロフィールを。

東京生れ。本名、平岡公威(きみたけ)。1947(昭和22)年東大法学部を卒業後、大蔵省に勤務するも9ヶ月で退職、執筆生活に入る。1949年、最初の書き下ろし長編『仮面の告白』を刊行、作家としての地位を確立。主な著書に、1954年『潮騒』(新潮社文学賞)、1956年『金閣寺』(読売文学賞)、1965年『サド侯爵夫人』(芸術祭賞)等。1970年11月25日、『豊饒の海』第四巻「天人五衰」の最終回原稿を書き上げた後、自衛隊市ヶ谷駐屯地で自決。ミシマ文学は諸外国語に翻訳され、全世界で愛読される。

引用元:http://www.shinchosha.co.jp/writer/2880/

戦後の日本文学会を代表する作家の一人であり、ノーベル文学賞の候補にもなった世界的にも名の知れた作家です。また、45歳という若さで自ら命を絶っています。この出来事は三島事件として知られています。

現在、文学賞として「三島由紀夫賞」が設けられていますよね。

『三島由紀夫レター教室』のあらすじ

『三島由紀夫レター教室』の冒頭を紹介。

五人の登場人物がかわるがわる書く手紙をお目にかけ、それがそのまま、文例ともなり、お手本ともなる、というぐあいにしたいと思います。

五人はそれぞれの生活において、泣いたり笑ったり、恋したりフラれたり、金を借りたり断られたり、また一方ではネコをかぶってお上品な社交的な手紙を書いたり、また、お互い同士で、憎み合ったり、あざけり合ったり、人からきた恋文を見せ合ったり、千差万化の働きをします。おしまいには糸がもつれてこんがらがって、大変なことになるかもしれないが、手紙は手紙、それぞれの一通は、一つの完結した世界です。

引用元:ちくま文庫「三島由紀夫レター教室」P1より

職業・年齢・性別の異なる五人の登場人物が絡んだ出来事について手紙でやり取りする様子を描いた、表現作品です。手紙の内容は恋愛相談・ラブレター・誹謗中傷・身の上話・お見舞い状・年賀状・探偵の依頼など様々です。

「五人の登場人物」紹介

『三島由紀夫レター教室』には五人の登場人物がいます。とても癖のある個が強い人物たちです(笑)年の差・境遇の違い・癖はあるものの五人は「筆まめ」であることは共通しています。

氷ママ子(45歳)

「氷ママ子(こおりままこ)」…登場人物の中でももっとも始末に負えない、かなり肥った、堂々たる未亡人で、元美人。自宅で英語塾を営む。

山トビ夫(45歳)

「山トビ夫(やまとびお)」…ママ子と同年のボーイフレンド。自分が一番洗練されていると信じており、皮肉屋で、文学的だが、どこか田舎臭い有名な服飾デザイナー。

空ミツ子(20歳)

「空ミツ子(からみつこ)」…ママ子の英語塾のかつての生徒。小柄で可愛らしく、手紙だけ読むと内向的なやさしいお嬢さんだが、時々おのずから茶目っ気が顔をだす。大きな商事会社に勤めるOL。

炎タケル(23歳)

「炎タケル(ほのおたける)」…貧しいながら、芝居の演出の勉強をしている、大真面目な、理屈っぽい青年。

丸トラ一(25歳)

「丸トラ一(まるとらいち)」…ミツ子の従兄。大学を3年留年している。まんまるに肥っているので、世にも楽天的。切手収集家で空想家。空想の中では自分は世にもスマートな青年と想像している。

こんな5人が繰り広げる作品です。

『三島由紀夫レター教室』名言10選

作品を通して登場人物たちの間に起きた出来事が互いの出した手紙を読んでいくことにより明らかになり、それぞれの感情・思惑・策略を読み取っていくことができます。

「筆まめ」である彼らの手紙は表現豊かであり、手紙を書いている際の登場人物の感情・表情を想像すると面白く、言い回しも独特です。

この作品の中で出会った個人的お気に入り名言10選を紹介します。5人の登場人物なので1人につき2つずつです!

氷ママ子のお気に入り名言2選

でも、私だって女で、いつだれが好きになるかわかりませんそのうちに私があなたを好きになるとしたら……そのときは、せっかくのあなたの計画を裏切るかもしれませんよ。

引用元:ちくま文庫「三島由紀夫レター教室」P88より

かつて美貌を備えていた頃のママ子。年齢を重ねても女性いつまでたってもは女性なんだなと、「女性らしさ」が出てしまったいる感じが好きです。

なぜって、だれでも、自分と全く同じ種類の人間を愛することはできませんものね。

引用元:ちくま文庫「三島由紀夫レター教室」P160より

「確かに!」って思ってしまいました…「似た者同士」は仲良くなれて、愛することができても「まったく同じ」は拒絶し合うのかもしれませんね。

山トビ夫のお気に入り名言2選

あなたに「おじさま」と呼ばれるのは辛いが、せめて手紙を読む間は、「おじさま」という呼び名を忘れて、私を一人の男性として扱ってくださるように希望します。

引用元:ちくま文庫「三島由紀夫レター教室」P30より

「田舎臭い」がわかる言葉。でも書いている姿を想像すると素敵。

あいかわらずおヒマですか?あいかわらずご多忙ですかと聞くのはあまりに月並みですから。

それはそうと、あいかわらずお若くてお美しいことでしょうね。(こっちのほうは、月並みが最上)

引用元:ちくま文庫「三島由紀夫レター教室」P43より

「文学的」な言い回しで好きですよ。

空ミツ子のお気に入り名言2選

三十年たち、四十年たって、自分の若い頃の魅力的な姿を思い出すには、やっぱりどんなよく撮れた写真よりも、他人の言葉の方がリアリティがあるに違いないわ。

引用元:ちくま文庫「三島由紀夫レター教室」P35~36より

そうなんですかね?三十年、四十年後に確認したいです(笑)

バカバカバカ。ハヤクケッコンシテ。

引用元:ちくま文庫「三島由紀夫レター教室」P129より

まさに「空ミツ子」を表した言葉です!

炎タケルのお気に入り名言2選

やはり古風に、伝統的に、

「結婚してくれ」

と言いたかったのです。

引用元:ちくま文庫「三島由紀夫レター教室」P77より

君の手紙が今度ほど可愛くて、手紙中にキスを浴びせたことはなかった。

引用元:ちくま文庫「三島由紀夫レター教室」P151より

どちらも「若さ」「真面目さ」「理屈っぽさ」を感じ、真っ直ぐな熱い人物像が明確に浮かびます。印象に残るフレーズ。

丸トラ一のお気に入り名言2選

あなたにしても、ぼくのような若い男から「心中しようよ」と持ちかけられたら、悪い気がしないはずです。死に花を咲かせるんなら、今ですよ。

引用元:ちくま文庫「三島由紀夫レター教室」P90より

こんな写りの悪い、ちっとも僕に似ていない写真を送るくらいなら、他人の写真を送ったって同じことだ、と思ったわけです。

引用元:ちくま文庫「三島由紀夫レター教室」P178より

「ユーモアを交えながらも本人は真剣に言ってるんだろうな。」と思うと笑ってしまいます。後者が特に好きですね。

手紙の書き方について

『三島由紀夫レター教室』なので、五人の手紙のやり取りに表現されている「書き方」が「文例」となり「お手本」ともなっています。

例えば「氷ママ子」が「空ミツ子」へ宛てた手紙において、「英文の手紙を書くコツ」をで述べています。

  1. 手紙はなるべくなら、I(アイ)ではじまらぬようにすることです。
  2. 物喜びをなさい。
  3. 日常の些事をユーモアを混ぜて入れなさい。
  4. 文法や構文に凝るよりも、形容詞に凝りなさい。
  5. ときどきちょっと文法や綴(スペリング)をまちがえなさい。
  6. 英語の手紙ということを忘れて書きなさい。

返事はなるたけすぐ出すように。私は世界中で、日本人ほど筆不精な国民はないのではないかと思います。

引用元:ちくま文庫「三島由紀夫レター教室」P109〜114より抜粋

また「作者(三島由紀夫)から読者への手紙」にも「手紙の書き方」について述べられています。

  • 私は手紙の第一要件だけを言っておきたい。それは、当て名をまちがいなく書くことです。
  • 手紙を書くときには、相手は全くこちらに関心がない、という前提で書きはじめなければいけません。これがいちばん大切なところです。
  • 手紙の受取人が受け取った手紙を重要視する理由は、

    一、大金
    二、名誉
    三、性欲
    四、感情

    以外には、一つもないと考えてよろしい。

引用元:ちくま文庫「三島由紀夫レター教室」P215〜218より抜粋

1991年12月4火に第1版発行されたにもかかわらず2016年10月6日においても共感できるポイントがあると思いますよ!

おすすめの一冊。年を重ねると共に印象が変わりますよ。

「この『三島由紀夫レター教室』は年を重ねると共に面白さ・作品の感じ方が変化します。」

と初めに言いました。

というのも私がこの作品に出会った時は20歳そこそこ。

初めて読んだ時はなんとなく作品の中で年齢の近い「炎タケル」「空ミツ子」「丸トラ一」よりに読み進めていたのかもしれません。彼らの「若さ」に共感しようとしていました。

ただ今までに何度か読んでいるうちに、歳を重ね読み返すと、「氷ママ子」「山トビ夫」の心情に(部分的に)反応するようになり、読み終えると以前読んだ時とは少し印象が変わって感じます。

『三島由紀夫レター教室』が好きな理由はこれですね。おすすめです。

これから先も大切に読んでいきたいと思います。

では。

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Today’s song

「Please, Please, Please, Let Me Get What I Want」The Smiths

記事を書いている人


名前:あらちゃん
年齢:28歳
出身地:静岡県
静岡県立大学国際関係学部卒。若者支援団体「若者エンパワメント委員会(YEC)」OB。エンパワメントの重要性を認識。
卒業後は人材派遣会社(東証一部上場)にて、製造工場での現場研修の後、営業・採用・労務管理として3年間勤務。青年海外協力隊へ応募し登録から合格へ。27年度3次隊。駒ヶ根訓練所。インドにて養蚕普及活動に携わる予定。

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