ワナッカム!
インドタミルナードゥ州ホスールにて養蚕農家への知識・技術普及活動に取り組んでます、あらちゃん(@kazuuuyama)です。
養蚕農家(Cluster:クラスター)への訪問記です。
先月に訪問したある養蚕農家。その聞き取りの最中に聞いた言葉が今でもずっと頭から離れないんです。
聞き取り調査をしていての出来事。
養蚕農家を巡回する際には彼らの基本的な情報収集を目的として下の資料を作成し利用して聞き取り調査をしています。

最低限の基本情報を調査するために使用している資料。調査のエントリーポイントとして役立てている。
家族構成・育てているカイコの量や品種・桑の種類や桑園の規模・一度の収穫にかかる経費など。養蚕に関する基本情報を聞き取り調査しつつ気になった部分は突っ込んでいっています。
私の活動地域の場合はタミル語・テルグ語・カンナダ語の三言語が使用されています。農家によってはタミル語だけ、テルグ語だけ、カンナダ語だけしか話せない養蚕農家、三言語すべて話せる養蚕農家、三言語話せるけどタミル語しか書けない養蚕農家などケースバイケースです。(私はタミル語しか現地語を勉強してないのでめちゃくちゃ苦労してるっていう…)
なので言語が達者なCPなどに協力してもらい私が聞きたい質問を通訳してもらってます。
家計簿をつけるのが怖い。
ある日のこと。
いつも通り、訪問した養蚕農家へのヒアリングを実施していました。
「家族の名前教えて」
「今回の収穫ではカイコは何を使ったの?」
「どこのマーケット使ったの?」
「前回と同じマーケット?」
「労働者は雇ってる?」
「どの時期に何人?」
「男女比は?」
「稚蚕はいくらで買ったの?」
などいつも通り聞いてました。
そして収穫で得た収入を聞き出している際にこんなやり取りがありました。
「家計簿(ノート)に収入を書いて記録したら養蚕を辞めたくなっちゃうと思うから怖いよね。」
言語の問題どうこうではなく、少しの間考え込んでしまって言葉が出なかった。
本当は、直近の収穫・その前の収入・その前の前の収入を聞いて、その差があることを調べて、それぞれの収穫で何が違ったのかを根掘り葉掘り聞いていこうと思ってた矢先のこと。
私は黙ってしまいましたが、みなさんならこの後なんて話を続けますか?
黙った理由
小学生くらいの頃。母親がレシートを引っ張り出してこたつの上で家計簿と睨み合っている姿を見たことがあります。
社会人になってからは「売上」「粗利」「人件費」「福利厚生費」などを考えながら翌月や翌週の目標を設定して仕事をしてました。
「経費を削るにはどうしたらいいのか?」「今月の広告費は妥当か?」「来月は〇〇があるので〇〇だけ売上が下がります。ただ粗利は〇%上がります。」とか。
確かに収入を知るのっていうのは怖いですよね。(データ打ち込んでて誤魔化したくなる時が何度もあったな…)
でもより良い成果を求めるためには「必要である」と私たちはわかっています。
数字を客観的に見れば具体的な目標や改善策も立てることができます。数字を比較すれば収入向上や生活の見直しにも繋がることです。
この養蚕農家の生活をより良くするために「必要である」と考えていたなのになんで黙ってしまったのか?
「この養蚕農家は収入が芳しくない現状を知っているんだ。」
「厳しい養蚕の現状を知っているのに養蚕を続けている。もし本当に家計簿をつけ出してより現状を知って養蚕を辞めてしまったら…」
って考えてしまって、なんだか彼に止めを刺すみたいで言えませんでした。
現実(怖さ)から逃げている養蚕農家の姿を目の当たりにして、現状に満足しようとしている姿勢を見てなんだかショックでした。
私自身がその現実、つまり養蚕農家の姿を受け入れられませんでした。
自分の「当たり前」を覆される衝撃
その後、収入の話とはサヨナラして別の質問をしました。
でも頭の中では「家計簿(ノート)に収入を書いて記録したら養蚕を辞めたくなっちゃうとろ思うから怖いよね。」が無限リピートです(笑)
「養蚕農家の収入向上」のために(第三者として)活動しているのだからもっと客観的にズバッと意見を言うべきなのに、受けた答えに対して柔軟に対応することができなかったのもなんか悔しかった。
いざ自分の「当たり前」を覆されると、黙ってしまうほどの衝撃を受けるのにも驚いた。
こんなことがこれからもあるんでしょうね。
ちょっとだけ養蚕農家へのヒアリングが怖く感じた出来事でした。
では。
Today’s song
「アメノヒニキク」RADWIMPS…「人間開花」最高です。